第6回目 8月の活動 ホームステイとアウシュビッツ訪問
ホームステイを2週間して
今月もクラクフから2時間半ほどの場所で、2週間のホームステイをさせていただきました。街は自然が溢れており、森や大きな池に囲まれた環境で、スーパーが近くにないため、チーズや牛乳は近くの牧場に買いに行くという生活でした。
お世話になったのは、若いご夫婦と8ヶ月の女の子のご家庭でした。

写真1:お世話になったホストファミリーです
ご夫婦は数ヶ月前にコテージを購入し、ポーランドの主要都市のひとつであるカトヴィツェから引っ越してこられたそうです。もともと田舎の暮らしに憧れていたことから移住を決意されたとのことで、自然の中でゆったりと生活を楽しむ姿が印象的でした。滞在中は一緒に散歩をしたり、庭で食事をしたり、バードウォッチングをして鳥の種類や鳴き声について教えていただいたりと、自然を身近に感じる日々を過ごしました。
まだ引っ越して間もなく家が完成していなかったため、壁のペイントをお願いされたり、広い庭の木を切る作業をしたりしました。これまで経験のなかった作業でしたが、とても新鮮で楽しく取り組むことができました。さらに、毎日1時間ほど赤ちゃんと森を散歩したり、午後には4kmのランニングを日課としました。

写真2:自然に囲まれたランニングコース / 写真3:毎日お散歩を楽しんでくれました
普段は運動を習慣にしていませんが、豊かな自然環境のおかげで自然と体を動かす気持ちになり、体も心も軽くなったように感じました。森の中を走ると、キツネに出会うこともありました。
また、滞在中にはホストの友人が10人ほど集まり、陶芸やポーランドのゲーム、キャンプファイヤー、遺跡の散策などを一緒に楽しむ機会もありました。

写真4:ポーランドで人気のボードゲームをたくさんしました。
ポーランドの文化として、ホストが誰かを迎え入れた場合、その人を神様のように大切にもてなすのがマナーだと聞きました。そのため、滞在中は常に素晴らしい待遇を受けていました。日本語には「おもてなし」という言葉がありますが、ポーランドのおもてなしは、日本のおもてなしとはまた少し違う温かさを感じました。日本では「相手に気を遣わせないこと」が大切にされますが、ポーランドでは「たくさん食べて!」「これも持っていって!」といったように、とにかく相手を満腹にし、喜ばせようとするエネルギッシュなおもてなしが印象的でした。

写真5:帰り道で食べてねとお土産をくださりました
私も滞在中にポーランド料理や寿司をふるまってもらい、ポーランドと日本の文化を共有する機会もありました。食事を通じて文化が交わる瞬間は、とても心に残りました。また、帰り際にはお土産までたくさんいただき、いつでも遊びにきてねと言ってもらいました。
こうした経験を通して、「おもてなし」という行為は文化によって表現の仕方は違っても、その根底にある「相手を大切に思う心」は共通しているのだと強く感じました。
アウシュビッツ収容所へ行ってきました
8月には、日本から友人や家族が来たので、一緒にアウシュビッツを訪れました。
写真6:有名なゲート「働けば自由になる」、収容者の抵抗により「B」の文字が上下逆さまになっています。

写真7:収容所に続く線路です
アウシュビッツはツアーに参加して見学することもできますが、午後5時以降であれば無料で自由に入ることもできます。
1回目はツアーなしで、2回目は日本人唯一の公式ガイド資格を持つ中谷さんによる日本語ツアーに参加しました。日本語で詳しく説明してもらえたことで、展示物の背景や当時の人々の状況をよく理解できました。1回目は英語の説明文を読みながら見学しましたが、2回目は理解の深さが全く違いました。
展示室には、当時の写真や収容者の持ち物(写真8)、ガス室で使われた殺虫剤の缶、殺された人たちの眼鏡や髪の毛の山などが並び、言葉を失うような光景が広がっていました。感情を持った人間が普通では考えられないようなことが、機械のように無関心で行われていたのだと知り、とても衝撃を受けました。さらに、驚いたことに、世界でトップレベルと言われていたドイツの医師でさえ、貨物で運ばれてきたユダヤ人の中から健康そうな人だけ20%選び、残りの人は収容所で殺す作業に関わっていたそうです。知識や倫理を持っているはずの人でも、命令や制度に従うことで残酷なことをしてしまうのだと、とてもショックを受けました。このことから、怖いのは憎しみだけではなく、無関心でも人が苦しむことにつながるとわかりました。

写真8:収容者の靴の山。中にはハイヒールもありました。
また、1年前に映画『関心領域』を観たことも思い出しました。収容所長ルドルフ・ヘスの家族が、収容所のすぐ隣で暮らし、収容者から奪った宝飾品や毛皮を身につけながら平穏な日常を送る様子が描かれていました。その家は今も残っていて、収容所の目の前にある現実を見たとき、無関心でいることの怖さを改めて実感しました。
アウシュビッツの訪問を通して、歴史教育の大切さについても考えました。ヨーロッパでは、多くの民族や文化が一緒に暮らしているため、学校ではただ覚えるだけでなく、事実を理解して話し合う授業が行われています。自分の意見を持ち、いろいろな考え方を比べながら学ぶことが大切にされているそうです。
日本でも2022年から歴史教育が「歴史総合」として変わり、近代・現代史を必ず学ぶようになったと中谷さんは話していました。昔のように覚えるだけでなく、話し合いながら学ぶ授業に変わっているそうです。背景には、グローバル化や、多様な価値観を理解して判断できる人が求められる社会の変化があります。また、中谷さんによると、最近では日本の企業もアウシュビッツを訪れることが増えていて、社員が歴史を学ぶことで、価値観や倫理観を育てることが企業としても必要になったのだそうです。知識だけでなく、人としての考え方や判断力を深めることが、会社の責任や社会に役立つと考えられていると言っていました。
今月のまとめ
ホームステイを通じて便利さのない暮らしの中で、自然や人との時間がとても豊かに感じられ、「不便=不幸せではない」ということを実感しました。普段日本では忙しさを理由に避けていた運動も、この環境では自然と生活に組み込まれ、体も心も軽くなったように思います。そして何より、「田舎」といっても日本で思う山奥の生活とは少し異なり、都市とのつながりを保ちながら自然を享受するという、バランスの取れた暮らし方があるのだと理解できました。
今回のアウシュビッツ訪問を通して、歴史をただ知識として学ぶのではなく、「人が無関心でいることの怖さ」を自分ごととして考えることができました。歴史教育や企業の活動を通して、現代社会で多様な価値観を理解し、判断力や想像力を育てることの大切さを強く感じました。アウシュビッツの悲劇は過去の出来事ではなく、今の自分たちの価値観や行動を考えるきっかけとして、とても学びの多い体験でした。










