fællesspisningってどんなもの??

皆さんは、デンマーク発祥の、“fællesspisning(フェッレスピースニン)“という取り組みが、デンマークだけでなく、世界に広がりつつあるのを知っていますか?

Fællesspisningは、初対面の人同士ででテーブルを囲んで一緒に食事をするイベントで、日本語では“市民食堂“、英語では“コミュニティ・ディナー“と訳されます。デンマーク内でも様々な場所で行われているfællesspisningですが、私は今回、Absalonと呼ばれる、教会を改修した施設で行われているものに参加してきました!

外食をすると、大抵の場合3,000円はかかってしまうデンマークにおいて、Absalonのfællesspisningでは、約1,200円(デザート付きの場合は約2,000円)で夕食を食べることができます。低価格になっていることで、一人暮らしの若者や海外からのバックパッカーなど、経済状況に関係なく様々な人々が参加しやすくなっているのです。

写真1 山本初音

(写真1)会場の様子

 :私が訪れたAbsalonでは、約200人が一緒に食事をすることができる。しかし、非常に人気なイベントでありチケットはすぐに売り切れてしまうため、早めの予約が必要。

 

では、私が参加したfællesspisningついて詳しく紹介します。

まず会場に着いてスタッフの方にオンラインチケットを見せると、その場でランダムにテーブルを割り当てられます。それぞれのテーブルには8人ほどが座ることができるようになっており、一緒に来た人を除けば、あとは初対面の人ばかりです。全員が揃ったところで、自己紹介を行う時間があり、その後それぞれのテーブルから2人選んで、大皿に盛り付けられた料理を取りに行きます。

写真2 山本初音

(写真2)各テーブルから2人ずつ、この場所に大皿料理を取りに行く

 

私のテーブルには、近所に住んでいるというデンマーク人の2人組、コペンハーゲンの建築会社でインターンをしているアメリカとインドから来た学生、フランスの旅行会社で働きながら、毎月10日間デンマークに滞在してリモートワークを行っている男性、息子の中学校選びのためにデンマークを視察しに来たクロアチア人の親子、そして私の8人が座っており、非常に国際色豊かでした。

初対面ということもあり、食事が始まる前はたくさん話す人と口数が少ない人とで少し差ができていたのですが、食事を取りに行く人を決めたり、食事を分担して取り分けたりすることで、「若いんだからいっぱい食べな〜!これくらい入れてもいい?」「ありがとうございます!でもあなたもスポーツされてるって聞いたのでたくさん食べてくださいね」などのような会話が生まれたり、食事中も「この食材は初めて食べた!」「えぇ、そうなんだ!私の国ではよく食べられているよ〜」という会話など、役割分担や食事を通してだんだんと打ち解け合うことができました。その後、すっかり仲良くなった私たちは、お互いのバックグラウンドや仕事・勉強内容、そして自分の国の文化など様々なことについて話し合い、とても楽しく、有意義な時間を過ごしました。

 

ちなみに、デンマーク人の2人に食品ロス対策について行っていることについて聞いたところ、

○Too Good To Go(先月紹介した食品ロス削減アプリ)の協賛店が家の近くにたくさんあるため、Too Good To Goは頻繁に使っている

○デンマークのスーパーでは野菜が大きな袋で1キロ単位で売られている一方、自分の家族の人数は多くはないため、一度にたくさんの料理を作って冷凍しておくことで、野菜が悪くなる前に使い切るようにしている

などの意見をもらうことができました。

写真3 山本初音

(写真3)同じテーブルで食事をし、仲良くなった人たちと

 fællesspisningから学び、考えたこと

高校生の時に、食という観点から出雲市の多文化共生に貢献することを目的とした課題研究を行った私にとって、食事を通して様々なバックグラウンドを持った人々と交流することができるfællesspisningは非常に魅力的であったと同時に、たくさんのことを学びました。

出雲市に移住する外国人が増えている一方で、私たち日本人との交流が少ないことに問題意識を持ったことから、両者の間にある壁を取り除くことを目的とした課題研究を高校で行いました。その際、多文化共生推進の方法として私たちのグループが注目したのは「食」でした。食は私たちにとって非常に身近なものであると同時に、それぞれの国の文化や風土が直接反映されているものであるため、互いの国や文化について知るのに最適なきっかけになると考えたからです。

当初はお互いの国の料理を一緒に作って食べることを通して、互いの国の文化や価値観について知り、相手を理解することに繋げようと考えていたのですが、ちょうどコロナ禍であったことから対面での交流ができず、悔いが残っていました。そこで、課題研究のリベンジをしたいと考えている私が、「食を通した多文化共生」に必要なことは何かについて、fællesspisningから学び、考えたことを書かせていただきます。

写真4 山本初音 - コピー

(写真4)高校の課題研究で作成した、ブラジルに関するパンフレット

:出雲市にはブラジル出身の人が多く住んでいることから、ブラジルの家庭料理「フェイジョアーダ」を、ブラジル人にインタビューを行いながら、身近に手に入る食材で作ることができるようにアレンジした。レシピの他にも、ブラジルに関する様々な情報を記載したパンフレットを作成した。

 

  1. 「食」×「低価格」=「参加の気軽さ」

    高校生の時から多文化共生に関心のあった私は、日本にいる間もいくつかの交流イベントに参加してきましたが、そのようなイベントの多くは、外国人との交流にもともと興味のある人のみが集まる傾向にあるように感じます。しかし、本当の意味での多文化共生を実現するためには、そのような人々はもちろん、今まで多文化共生についてあまり考えることのなかった人々にも互いの国の文化や価値観について関心を持ってもらうことが大切なのではないでしょうか。

    そこで、「食」という美味しくて身近なテーマを切り口とすること、さらに低価格であることで、そのような交流イベントに参加するハードルが下がり、気軽にふらっと立ち寄る人が増えるのではないかということを、fællesspisningへの参加を通して改めて感じました。実際に今回一緒に食事をした人々も、「“様々な人々と食事ができる“というコンセプトも素晴らしいけど、まず第一に美味しい料理を安く食べることができるから参加したいって思うよねえ〜」と話していました。このような「参加の気軽さ」を、多文化交流イベントを今後開催する上で意識していきたいです。

  2. 自然と会話が生まれる仕掛けづくり

    前述したようにfællesspisningでは、料理を取りに行く人・取り分ける人・片付けに行く人など、同じテーブル内において役割を分担するようになっています。このように一般的なレストランとは異なりセルフサービスとなっていることで、自然と会話が生まれるようになっています。

    また、fællesspisning終了後にも様々なイベントが毎晩行われており、今回は、ボードゲームを楽しむ“Board Game Night”と呼ばれるイベントが開かれていました。このように、fællesspisningを通して仲良くなった人たちと、より交流を深めることができる工夫もされていることが分かりました。

    写真5 山本初音

    (写真5)fællesspisning終了後、クロアチア人の男の子が持ってきていた知育ゲームに一緒にトライ!

  3. 1人でも参加しやすいコンセプト

    オープンでソーシャルなイベントとして知られているfællesspisningですが、実際に知り合いゼロの状態で行ってみるとどんな感じなのだろうと思った私は、あえて1人で参加してみました。すると、私と同じように1人で来ている人も少なくなくありませんでした。

    「初対面の人と共に食事をする」というコンセプトにより、テーブル内のほとんどの人と初めましての状態にあるからこそ、相手と話をして場を盛り上げようという思いや同伴者以外の人とも話をしようという意識が生まれ、1人でも参加しやすい雰囲気につながっているのではないかと考えました。

以上の1〜3がうまく重なり合うことで、様々なバックグラウンドや価値観を持った人々との出会い・交流が生まれ、多文化共生に必要な「相手について知り、理解すること」「お互いを思いやること」につながると思います。

島根の多文化共生推進に「食」の面からアプローチしていく上で、今回fællesspisningから学んだことを、しっかりと今後の活動に生かしていきたいです。