食品ロスに関するインタビュー

 実は、日本の食品ロスのうち、約半分は家庭から発生しています。そこで、食品ロス削減に関して先駆的な取り組みを行っているデンマークにおいて、食品ロス削減のために人々が意識していることや行っていることを知ることで、日本や島根における食品ロス削減のヒントを得ることができるのではないかと考え、デンマーク人の友人にインタビューを行いました。

 デンマークはToo Good To Goと呼ばれる、レストランやスーパーで売れ残ってしまった食品を割引価格で消費者に提供するアプリの発祥の地であり、このアプリは現在世界に広がっています。また、第2回(10月)のレポートで紹介した、Wefoodと呼ばれる世界で初めての廃棄食材専門スーパーも、デンマーク発祥です。これらはデンマークの食品ロス削減対策において非常に有名で、これらに関する日本語の文献も数多く見受けられます。このように世界を牽引する取り組みが盛んに行われているデンマークでは、人々の暮らしの中に食品ロス削減のための取り組みが溶け込んでいるのではないかと考えました。

 

1人目:実家暮らしの男子大学生

○家庭から出る食品ロスの量について
 :自分の家からは、食品ロスはほとんど出ることがない。食材は古くなる前に全て使い切るように徹底している。また、家族が職場において昼食として提供された料理の残りを持って帰ることが度々あるため、自分の家からだけでなく、他の場所における食品ロス削減にも貢献している。

○食品ロス削減のために意識していることについて
 :食材を買いに行く前に、現在家にあるものを確認して、何を買うべきであるか決めている。その他に特に特別なことはしていない。

○Wefood(第2回の活動で紹介した食品ロス専門スーパー)で買い物をしたことはあるか
 :利用したことはなく、そのようなスーパーがあることも知らなかった。

○Too Good To Goを利用したことはあるか
 :一度も使ったことがない。あまり必要性を感じていない。

 

2人目:同じ寮に住んでいる、彼女と同棲している男子大学院生

○一人暮らしにおいて発生する食品ロスの量について
 :倹約的な家庭で育ったため、食品ロスを出したことはほとんどない。

○食品ロス削減のために意識していることについて
 :買い物に行く前に、冷蔵庫を確かめて何を買うべきであるかを決めている。
 無駄なものは買わず、必要なものだけ、必要な量だけ買っている。

○Wefoodで買い物をしたことはあるか
 :存在については聞いたことがあるが、買い物をしたことはない。

○Too Good To Goを利用したことはあるか
 :使ったことはない。

 

3人目:同じ寮に住んでいる女子大学生

○一人暮らしにおいて発生する食品ロスの量について
 :食べ物が無駄にならないように努力しているが、たまに消費期限や賞味期限が過ぎてしまって廃棄しなければならない時もある。デンマークでは、食品は少量で売られることが少ないため、一人暮らしをしていると、買った食材を全て使い切ることは少し難しい。

○食品ロス削減のために意識していることについて
 :買い物に行った時、必要なものだけ買って、買い過ぎないようにしている。
 料理をするときは、冷蔵庫で余っている食材を何でも使って、食品ロスをなるべく減らすように努力している。

○Wefoodで買い物をしたことはあるか
 :存在は少し聞いたことがあったが、訪れたことはない。

○Too Good To Goは使ったことがあるか
 :以前何度か使ったことがあり、お財布にも環境にも優しいアプリだが、なぜか使わなくなった。しかし現在このアプリの必要性をそこまで感じていない。

山本初音 写真1

(写真1)インタビューさせてもらった、デンマーク人の友人

 

これらのインタビューを通して分かったのは、人々が食品ロス削減のために意識していることは、私が想像していたよりも特別なものではなかったということです。全員に共通して言えたのは、買った食材を絶対に使い切って廃棄しない、そしてそのために、買い物に行ったときは必要なものしか買わない、という取り組みでした。

また、興味深かったのは、過半数の人が自転車で通勤・通学するデンマークにおいては、仕事終わりや学校終わりに買い物に行った際、一度に買うことができる量が限られているため、使われぬまま廃棄されてしまう食材も少ないのでは、という意見でした。Too Good To GoやWefoodなどの食品ロス削減のために生まれたものに頼らなくても、普段の生活の中に食品ロスを削減する秘密が隠れているのだと気づきました。

今回のインタビューは学生を対象としていたため、一緒に暮らしている人数が多い、一般家庭にも聞いてみたいと思いました。また、Too Good To GoやWefoodの利用者は本当に少ないのかを検証するため、Googleフォームなどを用いたアンケートを行い、より多くの人を対象にした調査を行いたいです。

廃棄予定食材と消費者をつなぐデンマーク発祥のアプリ “Too Good To Go”

デンマークは、先ほど紹介した食品ロスを減らすために開発されたアプリ”Too Good To Go(「捨ててしまうには良すぎる」の意)”の発祥の地であり、現在では世界17ヵ国で使用されています。私の住んでいるコペンハーゲンでも、非常に多くのスーパーやレストランがこのアプリに登録しています。このアプリの使い方はいたって簡単で、気に入った商品を見つけたら、オンラインで料金を支払い、指定された時間にそのお店に行ってアプリの画面を見せて受け取るだけです。商品は既存価格の3分の1以下に設定されているため、非常にお買い得になっています。

山本初音 写真2

(写真2)Too Good To Goユーザーによる余剰食品の予約を受け付けている協賛店のマップ
 :アプリ上では、自分の近くにある予約受付中の協賛店を、マップを用いて簡単に見つけることができる。写真はコペンハーゲン中心部におけるものだが、協賛店の数の多さが、食品ロス削減への意識の高さを表している。

 

今回は、Nettoと呼ばれるスーパーにおいて、パンのまとめ売りを19DKK(約410円)で予約しました。指定された時間(21時〜22時)に取りに行ってみると、予想を遥かに超えるパンの量に非常に驚きました。8種類・合計28個のパンが袋に入っており、これらの通常価格は合計すると5,000円以上になるため、通常の10分の1以下の値段で購入できたことになります。友人や寮のキッチンメイトにあげたり、残りは冷凍保存したりしました。実際に食べてみても品質には全く問題がなく、非常に美味しかったです。

山本初音 写真3

(写真3)今回の私の購入品

 :日によって売れ残る食品が異なるため、どのような食品をゲットできるのかは、袋を実際に受け取るまでわからない。Too Good To Goでは、食品の入った袋を”Magic Box”と呼んでおり、消費者のワクワクをひきたてている。

 

日本にもToo Good To Goをモデルにして作られた“TABETE”というアプリがあり、島根にもTABETE協賛店があるのですが、その数は2025年1月時点でわずか3店舗(松江、出雲、安来に1店舗ずつ)です。東京(1,287店舗)に対し、大阪(288店舗)、広島(56店舗)と、日本の都市圏においてもその数にばらつきがあることが分かります。このようなアプリは、廃棄食材が減ることで環境に優しいのはもちろん、廃棄予定だった食品をお金に変えることができる店側、そして非常にお得な値段で食品を購入できる消費者にも大きなメリットをもたらします。島根において、より多くのTABETE協賛店とユーザーが増えるような取り組みを行いたいです。

2025年の抱負

 私の留学生活も残りあと半年となりました。2024年は初めての海外での生活や、大学の授業に慣れるので精一杯で、計画通りにいかないことも多かったです。しかし、コミュニケーション能力や諦めない力などを身につけることができたと思うので、2025年は、それらを生かして様々な場所に赴き、多くの人々と交流し、島根を持続可能な県にするために必要なことについて、たくさん勉強したいです。また、同時に島根の魅力についても今まで以上に発信していこうと思います。

山本初音 写真4

(写真4)お餅とどじょうすくい饅頭
 :今月はお正月ということで、キッチンメイトにお餅を提供した。日本ではお正月にお餅を食べる伝統があることを話し、醤油&砂糖、きな粉&砂糖の2種類の味付けを用意した。デンマークをはじめとしたヨーロッパでは、お餅はスイーツとして食べることが多いため、食事としてのお餅は彼らにとって初めてだったらしい。島根のお土産の代名詞であるどじょうすくい饅頭も提供したところ、残念ながら味(あんこ部分)の好き嫌いは分かれたが、その見た目の可愛さを皆が賞賛していた。どじょうすくいの踊りの動画を見せたところ、非常に関心を持ってくれて嬉しかった。