私の留学の概要

 私は2024年9月から2025年6月までの10か月間、コペンハーゲン大学への交換留学生として、デンマークに滞在します。私の将来の夢は、タイトルにある通り、地元である島根を「持続可能な県」にすることです。その第一歩として、高校・大学で関心を持って取り組んだ、食を通した多文化共生・食品ロス削減に貢献するための力を、このデンマーク留学で身につけてきます。

大学の授業の履修

 私は現在、コペンハーゲン大学人文学部に所属し、2つの授業を履修しています。まず“Danish Culture”の授業では、デンマークの文化や歴史について幅広く学んでいます。この授業ではたくさんの校外学習があり、コペンハーゲン市内を散策したり、お城や美術館を訪れたりします。もう1つの”Sustainable Development of Denmark in the World”の授業では、SDGs達成度ランキングが常に上位のデンマークが行っている、持続可能な社会の実現に向けた様々な取り組みについて学んでいます。この授業ではペアワークやグループワークが数多く行われ、デンマークを始め様々な国から来た学生と共に意見交換をすることで、多角的な視点から問題を捉える力を養うことができます。

 私の大学の授業はどれも1コマ当たり2~3時間と非常に長いですが、途中で15分ほどの休憩が入ります。その時間にコーヒーを飲みに行ったり、他の学生とお話をしたりすることで、気分がリフレッシュされ、日本での90分間の講義よりも集中して取り組むことができています。

写真1 ニューハウンの街並み

(写真1)ニューハウンの街並み
:コペンハーゲンを代表する観光地、ニューハウン(Nyhavn)。18世紀につくられたカラフルな建物が並ぶ港町であり、デンマーク出身の童話作家アンデルセンが住んだ家も残っている。

日本文化体験イベントの企画

 私の通うコペンハーゲン大学では、日本に興味のある学生と日本人学生とが交流できる「日本語カフェ」というイベントが毎週木曜日に行われています。穏やかな雰囲気のなか、現地の学生や他の国からの留学生とお話することができる、とても素敵な場です。彼らに日本の文化を紹介するうちに、実際にそれらを体験してもらいたいと思うようになり日本文化体験イベントを10月に開催することにしました。日本の魅力がより多くの人に伝わるように、他の日本人留学生と協力しながら準備を進めています。

”世界一の寮“での生活と日本食の提供

 私は現在、“Tietgenkollegiet”という名前の学生寮に住んでいます。デザインの国とも呼ばれるデンマークの技術が詰まったそのスタイリッシュな外観はもちろん、寮生間の交流を促進するための様々なイベントが行われていることから、この寮は”the World‘s Coolest University Dorm(世界一の学生寮)”と言われることもあるんです!私は1人部屋に住んでおり、デンマーク人11人と留学生2人の計13人で、1つのキッチンをシェアしています。彼らが私の「キッチンメイト」であり、全員で夕食を食べる「コモンディナー」を週に数回行ったり、テーマを決めて各自の部屋を飾り付け、そのテーマに沿った料理を提供したりゲームを行う「テーマパーティー」を開催するなど、様々なイベントを楽しんでいます。

 私の初めてのコモンディナーでは、日本からのお土産として箸と箸置きをキッチンメイト全員にプレゼントし、箸の使い方についてレクチャーしました。また、9月末に行われたコモンディナーでは私が料理担当であったため、日本食として手巻き寿司と肉じゃがをふるまいました。寿司レストランの多いデンマークですが、握り寿司とカリフォルニアロールしか知らない人が多かったので、日本には手巻き寿司やちらし寿司のように様々な種類の寿司があり、家庭でも簡単に作ることができることなどを伝えました。キッチンメイトの中にはベジタリアンの人もいるため、肉の代わりに豆を使った肉じゃが(豆じゃが?)も作りました。

 箸のプレゼントや日本食の提供を通して、キッチンメイトが日本に興味を持ってくれて、とても嬉しかったです。来月10月は「神在月」なので、私の地元・出雲の郷土料理であるぜんざいをキッチンメイトと一緒に作って、日本神話や出雲の歴史について紹介したいと思います。

写真2 コモンディナーでの日本食

(写真2)コモンディナーでの日本食
:キッチンメイトと夕食を共にする「コモンディナー」において、手巻き寿司と肉じゃがを振る舞った。13人で1つのキッチンをシェアしているため、キッチンはいつ訪れても賑やかである。

写真3 寮のフェスティバル

(写真3)寮のフェスティバル
:2日に渡って開催される、年に1度のフェスティバル。チケットを購入すれば寮に住んでいない人も参加することができ、2日間で3,000人以上が訪れるらしい。

見つけた課題とその解決策

 デンマークの公用語はデンマーク語なのですが、年齢を問わず、ほとんどのデンマーク人がネイティブ並みの流暢な英語を話すことができます。そのため、英語しか話すことができなくても、日常生活で困ることはほとんどありません。ですが、現地の人向けに作成されたポスターや標識などの中には、デンマーク語のみで書かれているものも多くあります。そのため、真の意味でデンマークを理解し、多くの学びを日本に持ち帰るためには、やはり現地の言語をマスターする必要があると感じました。そのため、自主学習はもちろん、市の提供するデンマーク語講座を受講したり、日本語を勉強しているデンマーク人の学生とお互いの言語について教え合ったりすることを考えています。

留学開始後1か月を振り返って

 今回が初めての海外であった私にとって、楽しみな気持ちと同時に不安もあったのですが、たくさんの人々の支えのおかげで、非常に充実した日々を送ることができています。留学開始から1か月が経ち、やっと生活にも慣れてきました。今回の留学の真の目的である、「食を通した多文化共生と食品ロス削減」の促進に必要なスキルを身につけるために、10月からはより多くのことに取り組んでいきたいです。

写真4 平日の昼下がりの公園

(写真4)平日の昼下がりの公園
:コペンハーゲンの中心にあるキングスガーデン(Kongens Have)では、平日の午後でもたくさんの人がお喋りや日向ぼっこをして、思い思いの時間を過ごしている。


 環境問題への取組みの高さだけでなく、世界幸福度ランキングも常にトップのデンマークの人々の生活は、日本とは大きく異なっており、毎日が驚きの連続です。平日の昼間でも、家族や友人と散歩をしたり、公園でお喋りや日向ぼっこをしている人が数多くいます。また、子どもと遊んだり、彼らの送り迎えをしている男性や、1人で街の中をすいすいと車椅子で移動する人たちもたくさんいて、日本との違いを非常に感じます。そんなデンマークで、島根を持続可能にするための方策をこの1年でじっくりと学び、島根に持ち帰りたいと思います。