第4回目 1月の活動 留学生活と小売店調査について
2026年01月28日
皆さん新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
今月の留学生活
12月末から始まった冬休みを利用して、チェコ、スロバキア、オーストリア、ハンガリーの四か国をソロバックパッカーとして旅しました。ドイツはヨーロッパの中心に位置しており、バス、鉄道、飛行機など多様な公共交通機関を利用して、比較的容易に多くの国へ移動することができます。例えば、今回の旅の最初の目的地であるチェコのプラハまでは、現在住んでいるドイツのインゴルシュタットから片道約6000円、所要時間約4時間で到着することができます。一人旅の醍醐味は、自由なスケジュール調整と、さまざまな人々との出会いにあります。実際に今回の旅では、韓国とカナダ出身の国際結婚をした夫婦と、その3歳の息子と出会い、2日間行動を共にし若い家族の価値観やライフスタイルについて学ぶ貴重な機会となりました。また、世界的にも珍しい完全中立国であるスイス出身の大学生とも交流し、男性に義務付けられている兵役制度や、NATO諸国と連携した訓練、さらにはそのNATOの一員であるフランスやドイツからの侵攻を想定した防衛体制など、中立国ならではの平和観や安全保障の考え方について話を聞くことができました。
さらに、有名な観光地を巡るだけでなく、前日に思いついた計画を翌日に実行するため、片道6時間をかけてハイキングに出かけるなど、一般的な留学生活ではなかなか経験できないアウトドアな活動にも挑戦しました。

チェコ・プラハのホステルで仲良くなったスペイン、イギリス、アメリカ、オーストリアの方たち
2026年1月17日、島根県グローバル人材育成支援事業の歴史に残るであろう出来事が発生しました。ドイツ・インゴルシュタットに滞在する私、フランス・リヨンに滞在する熱田さん、そしてトルコからペルーへ移動中の福田君の三名が、フランス・パリに集結しました。それぞれがこれまでの留学生活における進捗や成果、今後の目標について意見を交わし合い、互いに大きな刺激とモチベーションを得る機会となりました。このような素晴らしい仲間に恵まれたことを、心から嬉しく思います。
また、私はフランス・ノルマンディー地方にあるオマハビーチを訪れました。パリへはドイツのニュルンベルクから夜行バスで移動しましたが、ニュルンベルクはナチスが成立した都市として知られています。その地から、かつてナチスが侵攻したルートを通ってパリへ向かい、さらに第二次世界大戦において連合国が反撃を開始したノルマンディー上陸作戦の中でも、最も激しい戦闘が行われたオマハビーチを訪れたことで、ヨーロッパ戦線における戦争の現実を強く実感しました。この経験を通して、歴史を現地で学ぶことの意義とともに、改めて平和の尊さについて深く考えさせられました。

ルーブル美術館前で記念写真(植木を持った作業員も一緒に)
↑アメリカ軍が担当しノルマンディー上陸作戦における最大の戦地となったオマハビーチ、現在でもアメリカやドイツの兵士が静かに眠る
※パリから5時間かかる最寄りの駅からもバスで1時間かかるお世辞にも行きやすい場所に位置していなくそのバスも数時間に一本しかない。周りにはほとんど何もなく海岸には犬を散歩させている地元民しかほぼいない。しかしその中に一人だけアメリカから来た歴史専攻の大学生がいた。世界中でWW2に関する記憶はどんどん薄れている中、歴史を学ぶことは人類の未来のためにも必要不可欠であろう。
今月の研究
今月、私が注目した研究テーマは小売店、特にスーパーです。
実はここ数年、日本のスーパーマーケット業界では、先日起きたトライアルによる西友の買収や、ドン・キホーテグループによるアピタ・ピアゴの買収のように、大手による買収・合併が進んでいます。また、イトーヨーカドーの大量閉店や、地元密着型スーパーの閉店など、生き残りをかけた戦いが始まっています。世界的に見ても、成長を続けているスーパーは多くありません。そのような中、2025年前後の世界的な売上ランキングを見ると、1位から3位はウォルマート、アマゾン、コストコといった、これまでどおり数年前から予想がつく企業が並んでいます。しかし、4位と5位にはドイツ発のスーパーであるALDIとLidlが位置しています。
ドイツには、日本と比べてBIOスーパーなど、さまざまな特徴を持つスーパーがあります。その中でも、インフレーションが続くここ数年で大きく成長し、海外にも次々と勢力を伸ばしているのが、ディスカウントスーパーのALDIとLidlです。売上ランキングで4位に位置するLidlは大型店舗が多く、巨大な資本を使った戦略を取っており、日本のトライアルやドン・キホーテとかなり類似しています。一方で、売上ランキング5位のALDIは小中規模の店舗が多く、回転率や効率に力を入れており、資本力とは別の視点で勢力を伸ばしています。今回は、労働効率をテーマにする目的に加えて、現在の島根県が抱える人手不足や、小中規模の小売店が多いという点に注目し、ALDIの研究を進めてきました。
- 商品の並べ方
ALDIは、他の一般的なスーパーと比べると、三つの大きな特徴を持っています。その中でも一つ目の特徴は、商品の標準化された並べ方です。この特徴はALDIだけに限らず、Lidlや現在の日本の格安スーパーでも広く見られるもので、商品を個別に陳列せず、段ボールのまま店頭に並べる方式です。この方式を導入することで、商品をバックヤードから売り場へ移動させる作業が簡略化され、作業効率が大きく向上します。段ボールを開封し一つひとつ棚に並べる必要がないため、品出しにかかる時間を削減することができます。また、日本の小売店で頻繁の行われる商品の前出し作業も最小限で済むため、少ない人員でも店舗を運営することが可能になります
完全に輸送時の段ボールをそのまま店頭に並べるALDIの卵コーナー - 商品の種類
ALDIのもう一つの大きな特徴として、商品の取扱数が極端に少ない点が挙げられます。日本のドン・キホーテやトライアルのような格安スーパーでは、数え切れないほどの商品が並び、消費者は多くの選択肢の中から商品を選ぶことができます。しかし、世界レベルで成長を続けているALDIは、こうした国内の格安スーパーとは真逆ともいえる戦略を取っています。一般的に、スーパーでの買い物の楽しさの一つは、さまざまな商品を見比べて選ぶことにあります。しかしALDIは、あえてこの「選択の楽しさ」を最小限に抑え、その代わりに限界までの低価格を実現しています。基本的にALDIでは、プライベートブランドの商品が中心となっており、商品カテゴリーによっては自社ブランドに加えて有名ブランドを一つだけ取り扱う構成になっています。
このように商品数を意図的に絞ることで、ALDIは複数の面でコスト削減を可能にしています。まず、プライベートブランド中心の構成により、広告費や中間業者にかかるコストを削減することができます。さらに、取り扱う商品が限定されているため、一つの商品を全世界規模で大量に仕入れることが可能となり、他の小売店と比べてより低い仕入れ価格を実現しやすくなります。また、商品数が少ないことは消費者の購買行動にも影響を与えています。選択肢が限られているため、消費者は商品選びに時間をかける必要がなくなり、「どれを選ぶかを考える買い物」から「必要なものを素早く取る買い物」へと行動が変化します。その結果、店内の滞在時間が短くなり、店舗全体の回転率が向上します。この回転率の高さは、少ない人員で店舗を運営することを可能にし、ALDIの高い労働効率を支える要因の一つになっていると考えられます。
左 ALDIのトイレットペーパー売り場 右 一般的スーパーのトイレット売り場
(ALDIのトイレットペーパーは全てプライベートブランドでタイプが分かれた4種類のトイレットペーパーしか置いていないのに対し、一般的なスーパーは20社以上のブランドのトイレットペーパーが並んでいる)
- 決済システム
最後の特徴であり、ALDI最大の特徴は、これまでに述べた二つの戦略によって生まれた効率化に対応するための決済方法です。格安スーパーは、それぞれ決済手段に関して異なる特徴を持っています。例えば、日本のドン・キホーテや一部の国内スーパーでは、商品スキャンを有人レジが担当し、支払いのみを自動レジで行う方式が採用されています。
一方で、同じドイツに拠点を置く格安スーパーのNORMAでは、あえて自動レジを導入せず、どれだけ客が並んでいてもレジを一つしか稼働させないことで、不便さと引き換えに人件費や設備投資を削減し、価格を抑える戦略を取っています。そのような中で、ALDIは比較的珍しい形として、有人レジを一つまたは二つ稼働させつつ、現金にも対応した自動レジを導入しています。
さらにALDIで特に特徴的なのが、自社商品の多くに巨大なバーコードを採用している点です。有人レジ・自動レジのいずれであっても、バーコードの読み取りは基本的に手動で行われるため、バーコードの位置が分かりにくかったり、読み取りエラーが発生したりすることは少なくありません。ALDIではこの問題に対し、誰でも一目で位置が分かる巨大なバーコードを導入することで、スキャン作業を極めてスムーズにしています。
この工夫により、商品を選ぶ時間だけでなく、スキャンから購入に至るまでの時間も大幅に短縮されています。実際、ALDIによると、この巨大バーコードの導入によって、商品購入にかかる時間は最大で約40%削減されたとされています。このようにALDIは、商品の並べ方や人員配置だけでなく、入店から購入までの消費者の行動全体を最適化することで、少ない人員でも高い効率を実現しているのです。
左 有名ブランドのポテトチップス 左 ALDIブランドのポテトチップス(ALDIブランドの方のバーコードは一般的なバーコードの約10倍である)
効率化を最大限まで追求したALDIの戦略を100%すべて日本に持ち込むのは正直言ってマーケティングの違いや風習的に難しい。しかし小中規模のスーパーが一部を導入することで部分的な成長を期待できるのではないでしょうか。
今後の予定
正直やりたいことはいっぱいあります。アポを取っているアウディでエンジニアとして働いている方へのインタビュー、日本のトレンドを入れた労働調査、現在のドイツの労働環境を実現した歴史的要因、法律の視点からの労働者の権利などドイツ滞在中にやりたいことはたくさんあります。なので、様子を見ながらやりやすそうな調査から実施していきたいと思います。










