第1回目 10月 ドイツ留学への出発と活動
2025年10月30日
今回の留学について
現在、島根県を含む日本全国の企業は、人材不足や低成長といった大きな課題に直面しています。
今回、私が留学するドイツは、近年日本のGDPを上回り、ヨーロッパ経済の中心として発展しているだけではなく、世界最高水準の労働環境を実現しています。私は、そうしたドイツの高成長、高水準な労働環境を両立させている労働効率のしくみを学び、島根県の企業の成長と、労働環境の改善による人材に確保目指していきたいと考えています。
留学スタート
10月5日、名古屋の中部国際空港からシンガポール経由で約40時間かけて、ドイツのミュンヘン空港に到着しました。その後、バスで1時間ほど移動し、今回の留学先であるインゴルシュタットに到着しました。インゴルシュタットは、人口約15万のドイツの地方都市です。規模としては小さな街ですが、街を歩くと多様な国籍の人々を見かけます。実はこの街には、世界的自動車メーカーであるアウディの本社があり、各国からエンジニアやインターンシップ生が集まる国際的な環境が形成されています。その影響もあって、インゴルシュタットはドイツ国内でもトップクラスの経済成長を遂げており、労働効率を学ぶには最適な場所です。

写真1 インゴルシュタット街中の様子
私は現在、インゴルシュタット中心部に位置する Katholische Universität(カトリック大学)ビジネス専攻キャンパス WFI に在籍しています。この大学このキャンパス以外にも、インゴルシュタットから電車で約1時間の場所にある人口約4万人のアイシュタットに数千人が在籍している本キャンパスを構えています。
それに対して、インゴルシュタットにある WFI はビジネス分野に特化した小規模キャンパスで、学生数は約800人と、私が所属する島根県立大学浜田キャンパスとほぼ同規模です。しかし規模に対して国際性が非常に高く、ヨーロッパ各国をはじめ、南米、北米、アジア、アフリカと世界中から多様なバックグラウンドを持つ留学生が集まり、日常的に異文化コミュニケーションが行われています。また WFI のビジネス教育は、専門性が高い教授の下で講義が行われ、アウディを始めとする様々な地元企業の連携により、ドイツ国内でもトップクラスの評価を受けています。こうした環境で学ぶことで、ドイツの高い労働効率や企業文化だけでなく、グローバルな視点を養い、将来のキャリア形成に大きな力となる経験が得られると期待しています。
写真2 カトリック大学インゴルシュタットキャンパス

写真3 カトリック大学本キャンパス(本キャンパスは伝統的な作りになっているが、私が在籍するキャンパスはモダン的な作りとなっています)
ドイツでの住居ですが、多くの留学生が学生寮に住む中、私はより地元文化や他国のことを知るためにシェアハウスを選びました。
大学までバスで20分と少し距離がある位置ではありますが、アメリカ、インド、インドネシア、セネガルなど世界各国から集まった10人と共に生活するシェアハウスはなかなか日本で体験できる経験ではありません。そんな環境の中、みんなと共に料理をしたり、歌ったり、ゲームをしたりするのはもちろん、共にハロウィーンに向けて家をデコレーションし、地域住民の一員として地域行事に参加したりもします。

写真4 一部のルームメイトとの食事

写真5 ハロウィーンに向けての準備
10月の留学生活について
10月に始まったドイツでの新生活は、喜びと戸惑いが混ざり合い、様々な経験をしました。日本でこれまで熱心に英語を学んできたにもかかわらず、大学の講義やキャンパスイベントで実際に英語を使う中で、自分の発音や発声が周りと異なることを痛感し、次第に英語への自信を失っていきました。日本の英語教育ではあまり触れられませんが、日本語と英語では声の出し方や呼吸の方法が大きく異なります。日常会話であれば気にならない場面もありますが、毎週英語でプレゼンテーションを行い、相手に正確に理解してもらわなければならないアカデミックな環境では、日本語的な呼吸で話す英語のイントネーションや発音は時に大きな壁となります。これから留学を目指す方には、文法や語彙だけでなく、「英語の呼吸と発声」を早い段階で身につけることを強くお勧めしたいと思います。
一方で、言語面での苦労ばかりではなく、多くの喜びも経験できました。大学のイベントで知り合ったトルコやインドの留学生と一緒に、本学の別キャンパスがあるアイシュタットやミュンヘンを訪れました。そこでは、フリーマーケットなど物を大切に長く使うというドイツらしい文化に触れることができました。そんな中、運がいいことに私は英国製のウールコートをたった5ユーロ(約750円)で手に入れました。本来の新品価格は1500ユーロ(約30万円)もする高級品で、物価が高いドイツでは5ユーロといえば、マクドナルドのハンバーガー単品が買えるかどうかというレベルです。そのような場所で掘り出し物を見つけられたことは、きっと一生忘れない思い出になりました。

写真6 ミュンヘンの旧市役所

写真7 ミュンヘンでのフリーマーケット
10月の活動と今後について
留学初月となった10月は、大学内外のイベントや地域の行事、さらにはスポーツ活動などに積極的に参加し、できるだけドイツで働く人々とのつながりを意識して行動しました。その中には、学業と仕事を両立するドイツでは一般的な「ワーキングスチューデント」や、インゴルシュタットに本社を置くアウディ社のエンジニア、組立担当者など、さまざまな職業の人々がいました。ドイツは世界でも有数の労働環境を誇る国であり、私は今回、その「働き方」や「労働文化」を学ぶことも大きな目的の一つとして留学しています。実際にドイツで生活してみると、飲食店を除くほとんどの店舗が20時以前に閉店し、日曜日には多くの店が完全に休業します。また、「お客の便利さよりも店員の働きやすさを優先する」という文化が根づいており、日本と比べると生活面での不便さを感じる場面もあります。しかしその一方で、このようにして便利さを犠牲にして従業員のプライベートや労働環境を尊重するという理念が社会全体に浸透しているのではないかと思いました。
また、調査の一環としてインタビューを行ったインド出身のアウディ従業員の方によると、同社では従業員同士の連携によって業務を効率化し、誰かがどれほど有給を取得しても業務が滞らない体制を構築しているとのことでした。実際、現在私と同じシェアハウスで生活している中国出身の方も、10月の中国の祝日に合わせて約1か月間帰国していましたが、その間も彼の勤務先は通常通りに機能していました。このことから、ドイツでは社会全体として「働きやすさ」を重視した仕組みが整っているだけでなく、企業内部でも無理のないタスク配分と従業員間の協力体制によって、他国と比べても圧倒的に短い労働時間と多くの有給休暇を実現していることが分かりました。
来月は、アウディ社で働く他の従業員にもインタビューを行い、社内での効率化の仕組みについてさらに詳しく調査する予定です。また、インゴルシュタットで和食レストランを経営する日本人夫妻にも取材し、日独両国で働いた経験をもとに労働環境の比較を行う予定です。
その他
私は小学校入学前から空手道を学んでおり、今回の留学に際して調査を進める中で、インゴルシュタットに自分と同じ流派の空手道場があることを知りました。そこで、地元・岐阜市の空手道場の協力を得て、島根県および日本文化のアンバサダー活動の一環として現地道場を訪問しました。訪問時には、両道場でステッカを交換し、型の指導を行うなど、地域や国を越えた文化交流を実現することができました。訪問した道場には初心者からオーストリアチャンピオンまで在籍しており、ドイツ国内でもトップクラスの実力を持つ道場です。これからの一年間は、本道場の仲間たちと共にさらなる高みを目指して稽古に励み、空手を通じて日本文化の魅力を発信していきたいと考えています。

写真8 空手道場訪問










