12月に入り、ドイツを含むヨーロッパ全体では、一年で最も大切な祝日であるクリスマスが近づいてきました。街中はイルミネーションやデコレーションで彩られ、各地にクリスマスマーケットが登場するなど、10月や11月とはまったく違う雰囲気になっています。

今月は、そんなドイツのクリスマスの空気を感じながら過ごす一方で、大学のテストへの対応や、アパレル小売店に関する労働調査にも取り組みました。

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ニュルンベルクでのクリスマスマーケット

12月の学業について

 10月から始まったウィンターセメスターですが、講義によってはすでに期末試験が行われました。ドイツでは、義務教育段階での成績によって大学進学か職業訓練かが分かれるなど、教育制度全体がとてもシビアだと感じます。その雰囲気は大学に入ってからも変わりません。

ドイツの大学では、同じ講義の試験に三回不合格になると強制的に除籍となり、さらにその学科はドイツ国内のどの大学でも二度と学べなくなります。また、成績評価(GPA)も重要です。ドイツでは1が最高評価、4が合格、5が不合格という、日本とは逆の評価基準が使われています。このGPAは、大学院進学だけでなく、その後の就職にも大きく影響します。そのためどの学生もテスト勉強には本気で取り組み真剣な雰囲気が広がっています。そんな環境の中、私自身も人生で初めて、英語で受ける専門科目のテストに挑戦することになり、緊張しながら準備を進めていました。しかし、ここで思わぬトラブルが起こりました。

日本では、講義の欠席が一定数を超えると試験を受けられなくなることがありますが、ドイツでは出席しないこと自体は学生の権利とされており、成績には直接影響しません。その代わり、試験はすべて学生自身が個別に登録する必要があります。

履修登録をすれば自動的に試験を受けられる日本とは違い、ドイツでは試験の約3週間前から、大学のウェブサイトから登録を行わなければなりません。ところが、その登録を完全に忘れてしまい、気づいた時には締め切りを過ぎていました。テストを受けられない可能性もありましたが、担当教授や国際オフィスの方々に相談した結果、特別に対応していただき、無事に受験することができました。今回の経験を通して、ドイツの大学制度の厳しさと同時に、自己管理の大切さを改めて実感しました。

アパレル小売店でのインタビュー調査

 現在、日本の小売業、特にコンビニエンスストアやアパレル店舗では、長時間労働や店長・正社員への負担が大きな課題となっています。例えば厚生労働省の統計によれば、小売業全体で週60時間以上働く従業員の割合は約15%にのぼり、コンビニやアパレル業界では店長クラスの残業が常態化しています。また、有給取得率は全産業平均を下回り、約50%程度と低水準にとどまっているというデータもあります(参考:厚生労働省「就労条件総合調査」2023年)。

こうした日本の現状を踏まえ、労働環境改善策を検討するため、外部からだけではない内部から調査を行い日本との比較が重要であると考え、先月から大学から30分離れた場所にあるアウトレット内の「ノースフェイス」で働きました。そんな中今回はこちらのノースフェイスで二年間店舗マネージャーとして働くロバートさんに話を聞くことができました。

 今回のインタビューではいかにしてマネージャーや正社員を含めた全労働者の労働時間をコントロールしながら店舗を運営していることに焦点をおきながら調査をしました。前記の通り日本でのアパレル小売店での労働環境はかなり厳しく特にマネージャークラスになると年間休日数が他の業種と比べ少なく長時間労働が強いられる環境が現在問題になっております。しかし、こちらの店舗ではマネージャーを含む3人の正社員が全員年間約30日以上の有給を実現しており、マネージャーでも週40時間を超える労働がめったに発生しません。

しかし、その一方でアルバイトの働き方や、アルバイトを含めた店舗社員の数も日本の店舗と同じような数であるなど明確な違いはありませんでした。つまり日本と同程度の労働条件の下で長時間労働を回避しています。

 インタビューやこれまでの労働経験から以下の点がこのことを実現していると考えられます。

  1. 労働効率
    今回の留学のメインテーマでもある労働効率ですが、ドイツの考え方と日本の考え方はかなり違いがあると感じました。日本では長時間労働はより多くの結果を生むと考えている一方、ドイツでは効率が悪いと考えられています。特にロバートさんは最適な労働時間は一日6時間、週30時間であり最高のワークライフバランスを保ちながら高いパフォーマンスができると考えております。6時間を過ぎると集中力が下がり結果的にずっと集中する6時間労働と途中で集中力が切れる8時間労働では結果的に同じパフォーマンスになるとおっしゃっていました。
  2. 有給の取り方
    日本のアパレル小売店やコンビニエンスストアのマネージャーの年間の休日数は他業界と比べて圧倒的に少ないという問題がありますがここの店舗ではマネージャーでも特別に忙しい時期を除いて簡単に有給をとることができます。実際クリスマスにあわせて2週間の休暇を取る人もおり、さらにアルバイトである私も簡単に有給を使うことができました。有給をとることは他人に迷惑をかけるという考え方が残っている日本と違いドイツでは交代に長期の休暇を取ります。今回であっても従業員Aがまず2週間の休暇を取りその後従業員Bが2週間の休暇を取ります。つまり、有給がある環境ではなく有給が使えて、公平に全員がタイミングを調整しながら休むことができる環境が他人に迷惑をかけずに有給を所得できる環境を作っているのです。またマネージャー等管理職にすべての裁量を一人に渡すのではなく店舗運営の責任をマネージャアシスタントと分けることで管理職でも休暇を取りやすいのです。
  3. 従業員コントロール

    日本でのアパレル小売店などの離職率は高く入社3年以内の新卒は36%、高卒では48%と高水準な数字を出しています。しかし実際にドイツのこちらの店舗では全員が楽しくストレスなく働いています。ドイツでも日本でも資本主義の企業ということでそれぞれの店舗に売り上げ目標があります。日本では売り上げ目標が達成しないとペナルティーがあることがしばしば見られますがこちらの店舗では達成したらボーナスが発生する一方ペナルティーは発生しません。というのもここでは働く人のストレスをできるだけ減らすことが目標になっています。ロバート氏によれば、マネージャーの役割は部下を厳しく管理することではなくいかにして従業員の働くストレスを軽減し、個々の潜在能力を引き出すかにあるといいます。ストレスを抑え、働きやすい環境を整えることで、結果として高いパフォーマンスが生まれるという考え方は、前述の労働効率や有給休暇の運用とも密接に結びついています。

    さらに、長時間労働が問題となっているコンビニエンスストアについても、ロバート氏は「従業員が15人前後いれば、適切な人員配置と役割分担によって、全員の長時間労働を回避し、店長であっても休暇を取りやすい環境を構築することは可能である」と述べていました。

 以上の調査から、アパレル小売店やコンビニエンスストアにおける管理職の長時間労働は、個人の努力や意識の問題によって生じているのではなく、店舗運営の方法や役割分担の構造によって生み出されている可能性が高いことが示唆されました。本調査は一店舗の事例に基づくものであり一般化には限界があるものの、店舗運営の設計を見直すことが、日本のアパレル小売業やコンビニエンスストアにおける労働環境改善の一つの方向性となり得ることを示すものだと考えられます。

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ノースフェイスで2年間店舗マネージャーとして働くロバートさん 

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ノースフェイスの店舗

来月について

 今月は第三次産業に関して注目していきました。来月は再び製造業に戻してアウディで働く人々に調査をしていきたいと思います。

 それでは皆さんメリークリスマス、そしてよいお年を!