第2回目 11月の活動 留学生活とアウディについて
2025年11月28日
11月に入り、日本では徐々に冷え込みが強まっている頃だと思いますが、私が暮らすドイツ・インゴルシュタットでは、すでに本格的な冬に突入しています。気温は常に0度前後を行き来し、日によってはマイナス5度を下回ることも少なくありません。朝晩は空気が刺すように冷たく、外に出るたびに冬の厳しさを実感しています。これまで日本の冬に使用してきたジャケットでは十分に対応できない、寒さと乾燥の影響で口元がひび割れるなど、さまざまなトラブルにも見舞われました。しかしそれでも留学開始から1か月が経ち、こうした環境の違いにも徐々に慣れ、ドイツでの生活に適応してきていると感じています。
ドイツでの大学生活について
11月に入り、本格的に大学の講義が始まりましたが、日本の大学と比べていくつか大きな違いが見られます。日本の大学の文系科目は、通常週1コマ・90分の講義を15回実施する形式が一般的です。一方ドイツでは、1コマの時間が120分と長く、一週間に同じ講義が4回以上あることも珍しくありません。さらに同じ科目でも「レクチャー」と「プラクティス」に分かれている場合があります。レクチャーでは教授の説明を通して知識をインプットし、プラクティスでは毎週プレゼンテーションなどを通じてアウトプットが求められます。一つのトピックを深く理解することを重視しており、講義の主体は教授だけでなく学生にもあります。つまり、教授と学生が対等な立場で意見交換する場として、講義が構成されている点が日本との大きな違いだと感じています。
学生生活について
ドイツにも日本と同様に、講義以外にサークルや多様な学生団体が存在します。その中で私は、11月から「留学生が留学生を助ける」をスローガンに掲げる国際学生団体 ESNに参加しました。ESNはヨーロッパを中心に約40か国に拠点を持ち、1990年の正式登録以来、毎年35万人以上の留学生に支援サービスを提供しています。各地域の支部が毎週のようにイベントを開催しており、留学生の交流の場として非常に活発に機能しています。今回はそのESNが企画したスイスへの2泊3日の旅行に参加しました。スイスは“絶景の国”として知られていますが、その評判通り、一度見たら忘れられないほど雄大な景色が広がっていました。一方で、スイスは世界でも物価の高い国として有名です。節約のため何度かマクドナルドを利用しましたが、ハンバーガー単品で約1,900円と、日本ではまず考えられない価格に驚かされました。

写真1 ESNが実施したスイス旅行の集合写真

写真2 スイスの絶景
アウディについて
今回の留学の主要テーマである「企業効率の研究」を進めるため、私はインゴルシュタットに本社を置く世界的自動車メーカーであるアウディの本社工場を視察しました。アウディはインゴルシュタット経済の中核を担っており、従業員数は4万人以上、地域住民の約3人に1人が関連産業に従事していると言われています。工場の敷地面積は約1.99平方キロメートル(東京ドーム約43個分)に及び、単一製造拠点としても世界屈指の規模を誇ります。生産ラインは24時間体制で稼働し、3交代制によって高い生産キャパシティを維持しています。自動車産業は、大量生産と多品種少量生産が併存する典型的な業界であり、顧客ニーズの多様化や電動化の進展により、生産システムにはこれまで以上の柔軟性と効率性が求められています。今回の工場見学では、巨大な生産拠点にもかかわらず、生産リードタイムの短縮とオペレーション効率の最大化を両立させるための数多くの取り組みを確認することができました。

写真3 アウディ本社の中にあるアウディミュージアム
- 移動効率化
広大な工場内では、従業員が各作業場へ移動するだけでも時間と労力がかかります。アウディでは、この移動にかかる無駄を減らすため、工場専用のシェア自転車を多数配備し、自転車専用レーンを整備しています。従業員はこれを利用して迅速に担当場所まで移動でき、生産ラインの稼働効率を維持することが可能です。さらに、従業員の移動時間を最小限にするだけでなく、移動による負担を減らすことで作業への集中力も高められます。また、工場内には数百におよぶ各作業ユニットは休憩スペースが一緒に設置されています。これにより、休憩のための移動時間が削減されるだけでなく、従業員が自分の作業場の近くで安心して休息できる環境が整えられています。このオフィスワークを掛け合わせたこの仕組みは、従業員の心理的な安心感や作業への没入度を高め、長時間の稼働でもパフォーマンスが落ちにくくなる効果があります。私自身、以前日本の工場でアルバイトをした際には、作業場と休憩室が離れていたため、休憩のたびに移動時間がかかり、集中力が途切れることを経験しました。その点、アウディの仕組みは非常に合理的であると感じました。 - 生産効率
近年、多くの工場で機械やAIの導入が進められていますが、アウディの工場でもその傾向が顕著に見られます。工場内では、自動化された機械やAI搭載の設備が多くの工程を担当しており、全体の作業の約80%は機械によって行われています。これにより、人手だけでは達成できない高精度かつ高速な作業が可能になっています。例えば、車体の組み立てや溶接、塗装などの重要工程は、ほとんどが機械によって正確に処理されており、人間は主に監視や調整、品質確認の役割を担っています。さらに、各生産レーンにはチームリーダーが配置されており、各ブロックの進捗状況を常に監視しています。工場では、各ブロックの作業時間は平均で80秒に設定されており、これは一つの作業ユニットが次の工程に部品を送り出すための標準的なサイクルタイムです。この80秒のサイクルは非常に厳密に管理されており、どのようなトラブルや遅延が発生しても機械の稼働を止めないことが徹底されています。万が一、作業が遅れそうな場合には、チームリーダーが自ら現場に入り、手作業で作業をサポートし、次の工程に支障が出ないよう調整します。
この仕組みにより、ライン全体の稼働率が維持され、無駄な停止時間がほとんど発生しません。各ブロックが80秒ごとに正確に作業を完了することで、ライン全体がシームレスに連携し、機械と人が協力して効率的に生産を進めることができます。また、チームリーダーは各ブロックの進捗だけでなく、作業員の負荷や安全面にも目を配っており、効率性と安全性の両立が実現されています。このように、アウディでは機械化による高速・高精度な生産と、人のサポートによる柔軟性を組み合わせることで、生産ラインの安定稼働と効率性を両立させています。80秒という短いサイクルタイムの中で、機械と人が連携して動く仕組みは、単に自動化を進めるだけでは得られない、生産効率の最大化を実現する工夫だと感じました。
来月の活動予定
企業の効率化をより詳細に調べるには企業の内部を見るだけではなく実際に従業員として働くことが大事だと思います。そこで11月後半から研究目的のためにノースフェイスのドイツ現地小売店にて短期契約のアルバイトを始めました。そこで来月は実際にドイツで働いた感想とそのシステムそしてマネージャーへのインタビューを通じて企業内部から効率に関して研究したいと思います。










